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2007年5月26日 (土)

イム・グォンテク監督作品パンソリ映画「春香伝」

「文楽は芸術だ!」を書いて「女殺油地獄」と共に思い出した映画がもう一つあります。それがこの「春香伝」です。なぜ文楽から韓国映画なのか?と思われるかもしれませんが、それはこの映画が韓国の伝統的な語り芸”パンソリ”で進行していくところにあります。私はその”パンソリ”の芸に感動したのです。

「パンソリ」という語り芸が、文楽の浄瑠璃=義太夫節の語りと非常に似ているのです。日本人も韓国人も同じモンゴル系民族なので、身体的特徴、声帯なども近いものがあったり、また文法も同じ配列であったり、そういうところから、パンソリと義太夫節の語りが似ているんだと思います。

韓流ブームが来る前の映画。”近くて遠い国”と言われていた韓国の時代劇を初めて観たのもこの映画、韓国映画の底力を見たのもこの映画でした。

2000年『春香伝』

監督      イム・グォンテク

脚色      キム・ミョンゴン

パンソリ    チョ・サンヒョン

出演      春香(チュニャン)  に  イ・ヒョジュン

         夢龍(モンニョン)  に  チョ・スンウ

物語は、貴族の息子夢龍が長官の父の赴任先で、身分の低い美しい娘春香に恋し、将来を誓い合う。だが、長官の父はソウルへ戻らなければならなくなり、夢龍もソウルへ行ってしまう。必ず再会を約束して別れた二人であったが・・・

よくありそうな話で、韓国人であれば、知らない人はいないようなお話。日本でいえば「忠臣蔵」のようにポピュラーなお話です。

今までも何度も映画化されているそうですが、それまでの映画と決定的に違うことは、なんといっても”パンソリ”なのです。

この映画のパンソリは、韓国の人間国宝チョ・サンヒョン氏が語っておられます。私には、まるで文楽の名人のお師匠さん(太夫)が語っているように聞こえました。

この映画は、普通の映画と違ってパンソリと映像を楽しむ映画です。

とてもリズミカルで、ユーモアがあり、躍動感があります。

私たち日本人の細胞の奥の奥に潜んでいるモンゴル系民族のDNAがパンソリの響きによって呼び起こされ、この映画に酔いしれるのです。

ぜひ、一度ご覧になってみて下さい!

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2007年5月12日 (土)

五社英雄監督作品「女殺油地獄」

「文楽は芸術だ!」などと偉そうなことを書いて思い出したのが、五社監督の「女殺油地獄」オンナゴロシアブラノジゴクです。五社監督の作品全部観ているわけじゃありませんが、「陽暉楼」ヨウキロウだの有名な作品がありますが、私は断然この「女殺油地獄」を一番に揚げます。

1992年作品「女殺油地獄」

監督  五社英雄

脚本  井手雅人

出演 油屋河内屋の放蕩息子与兵衛 に 堤真一

    油屋豊島屋の女房お吉に 樋口可南子

    油屋元締め一人娘小菊に 藤谷美和子

    その他、河内屋のお兄ちゃんに 辰巳琢郎

    豊島屋お吉の亭主に 岸部一徳 など

この映画の原作は、言わずとしれた文楽作家 近松門左衛門の「女殺油地獄」です。この映画を観たとき、これは現代の近松だ!映画ってほんとうにすばらしい!と思わせてくれた作品です。シナリオがすごく良く出来ています。

物語は、河内屋の放蕩息子与兵衛に手を焼いている河内屋夫婦(父親は、義理の父で元使用人)が、豊島屋のお吉にお金を託し、そのお金で放蕩から足を洗って、真面目な商人になるよう説得してもらうことから始まります。  だが与兵衛の放蕩は収まらず、こともあろうに油屋総元締め(油屋仲間の親方)の一人娘小菊に手を出してしまいます。お吉はなんとか二人を別れさせようとしますが・・・・・

ラスト、与兵衛が豊島屋でお吉に斬りかかっていくところは、樽から油がこぼれて滑りながらの格闘で映画ならではのリアルさですごいです。

映像、物語、キャステング とすべてそろっているように感じました。

樋口可南子さんの色気は、女の私にはよくわかりませんでしたが、堤真一さんには生唾ゴクリ。堤さんがフジテレビの月9(ゲック)ドラマ「ピュア」で大ブレイクする前の作品ですが、関西人の堤さん、せりふも関西弁ですからしゃべりやすいでしょうし、不良青年役にぴったりという感じでした。

映画の中で、堤さんが「曾根崎心中」の道行きの台詞をボソッと言うシーンがあるんですが、

   『この世の名残(ナゴリ) 夜も名残 死に行く身をたとうれば

   あだしが原の道の霜・・・』

シビレました。

また、小菊を誘い出し遁走する時、ザーザー降りの雨の中、元締めの家の庭の中にほっかむりをした与兵衛が突っ立って鋭い目で小菊を見てる・・・女だったら、誰でもついていきたくなる風情でした。

ということで・・この映画、まだご覧になっていない方はぜひご覧になって下さい! すばらしい日本映画です。!!!

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