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2009年11月 8日 (日)

根岸吉太郎監督作品「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」

一年前から楽しみにしていた映画です。

「雪に願うこと」「サイドカーに犬」の根岸監督、NHKドラマ「蔵」に主演された時から注目していた松たか子さん、脚本はシナリオ界の重鎮田中陽造氏、相手役に浅野忠信さん、どんな映画になるのかとワクワクでした。

「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」

Photo     監 督          根岸 吉太郎

    脚 本         田中 陽造

    音 楽         吉松 隆

 出演         大谷佐知       松 たか子

             大谷穣治       浅野 忠信

             椿屋主人       伊武 雅刀

             椿屋女房        室井 滋

             バーの女給 秋子   広末 涼子

             椿屋の客 岡田    妻夫木 聡

             弁護士 辻       堤 真一    など 

私が20代に入ったばかりの時、太宰治にはちょっとした思い出があります。

それは女性の一人称独白形式の「待つ」です。

また女性独白形式「燈籠(とうろう)」の文章も強烈に心に残っています。それ以外太宰治の小説を沢山読んだというわけではありません。

この人は女の人の気持ちが解る? 人だな・・と。

だからと言って、心中未遂を二回、三度目の心中で亡くなった と聞いても???

頬杖をついたあの写真を見ても???・・・気取ったおじさん・・・(すいません!(^_^;) )ぐらいにしか思っていませんでした。

今回、映画「ヴィヨンの妻」のラストシーン、ラストの佐知のせりふには圧倒されました。

ですが、2009年10月10日に観た時と2009年11月7日に観たときでは、たった一ヶ月なのに、感じかたは少し違うのです。

その人の生きている環境ー生活している環境、ちょっとした事件などその時々で

ラストのあの言葉は、微妙に違って聞こえてくるように感じました。

でも、もっと大きくこの映画を観たい!と思っています。

物語は大谷穣治が子供の頃、鉄の輪のエピソードから始まり、大谷が暗闇の中からマントをひるがえし、観客席に向かってかけて来る ー モノクロから渋いカラーへと画面が変わります。その始まり方も面白い。

そして小説「ヴィヨンの妻」と同じように居酒屋「椿屋」から金を盗み、その店の主人と女将さんが追いかけて、大谷の家に来るというところから、全体は小説「ヴィヨンの妻」を中心とした展開になります。

大谷と佐知が結ばれるいきさつが、小説「燈籠」から。ー燈籠のさき子が佐知に、水野が辻になっています。

貧しい佐知が同じく貧しかった辻のためにマフラーを万引きする。そして交番に連行される。その様子を見て辻は逃げだしますが、大谷が佐知を助けたところから二人が結婚することになる。なるほど~と思ってしまいました。

そして佐知が大谷の借金のために椿屋で働きはじめると、佐知を慕う青年岡田が、そして佐知がかつて好きだった辻が絡んできます。

小心者の大谷は、佐知が人気者になって、輝いていくことに嫉妬します。そして佐知が椿屋から岡田と佐知が一緒に帰るのを尾行します。それがなんか可笑しくて笑ってしまうんですよ。浅野さん演ずる大谷はなんか憎みきれない可愛さがあるんですねぇ~

大谷は岡田と二人で飲んだ後、岡田を自分の家に連れて帰ります。そして岡田が佐知に求愛したことを盗み聞きして家を出た後、バーの女給である秋子と心中するんです。心中は未遂に終わり、今度は佐知が大谷を助けるために辻に連絡を取る。辻の事務所に赤い口紅をひいて、「お金ありません」と乗り込んで行くのです。

ラストはまた椿屋で佐知と大谷、大谷が椿屋の主人に向かって「佐知をよろしくお願いします」と出ていったあと・・・佐知は追いかけてあの言葉、あのラストシーンへ。

佐知が大谷を追いかけていく時のあの表情、やっぱり惚れているんだと思いました。あの二人は奥の奥でやはり離れられない、つながっているんだと感じました。

大谷の行動が佐知に変化を与え、また佐知の岡田との行動が大谷に変化を与え、大谷の秋子との行動が佐知に変化を与え、佐知と辻の行動が大谷に変化を与え、終盤を迎えるという、人間ドラマが凄い!と思いました。

日常にある小さな人間のドラマをこれだけ飾り立てることなく私の心に大きく響かせる ー 観客に見せることができるということは、ほんとうにすごいと思いました。

根岸監督は今までもその実力は認められていますが、第33回モントリオール世界映画祭で、最優秀映画監督賞を取ったことも頷けます。

映像、美術、音楽、脚本、演出、俳優 と どれもが素晴らしい!

佐知を演じきった松たか子さん、この役ほんとうに彼女のためにあるのだと思いました。

よかったです!

そして、なんとも魅力的な大谷=太宰像を演じた浅野忠信さん、惚れてしまいましたよ!(爆)(*^_^*)  大谷が秋子と温泉宿で、義太夫節を唸る場面ー上手い!と思わず笑ってしまいました!

広末涼子さんの秋子も佐知とは髪型から着物の色まで対照的なスタイルで、メガネがいかにも文学好きの女性という感じで、この映画になくてはならない存在でしたね。

妻夫木君も、初初しい青年という感じが良くでていて、いい感じでした。良い人はあんな風にして身を引くのね。(T_T)

私のご贔屓堤真一さん、ソフトがよく似合ってました!(爆)

そして忘れてはならない椿屋の主人伊武雅刀さん、女房の室井滋さん、しっかり脇を固めて主役二人を盛り立てていました。

最後に小説「燈籠」の科白から

ー せめて来年の夏までには、この朝顔の模様のゆかたを臆することなく着て歩ける身になっていたい。ー

あのラストシーンの後、佐知はあさがおの模様の浴衣を着て大谷とぼうやと三人で縁日の人混みの中を歩いていることでしょう。

 

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